
奈良・吉野山にある「金峯山寺(きんぷせんじ)」は、飛鳥時代に修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)によって開かれたお寺。国宝の仁王門には、像高5メートルもの巨大な金剛力士像が立ち、その迫力は圧巻。国宝や重要文化財に指定されている金剛力士像の中では、東大寺南大門の金剛力士像に次いで2番目の大きさを誇る。金剛力士像は、筋肉隆々とした力強い姿でポーズを決め、手足の血管まで浮き上がるほどのリアルな造形。大きな顔立ちに鋭い眼差し、腰に巻く裳(も)は風になびくように表現されている。像の内部には墨書が残されており、南都仏師の康成(こうじょう)らによって、南北朝時代の延元3年(1338)の翌年から制作が始められたことがわかっている。現在は彩色がはげて白っぽく見えるが、一部に赤色が残っている。かつては全身が赤く塗られていたと考えられている。全身が赤色だとより迫力が増しそうだ。現在、金峯山寺仁王門の修理中で、修理完了(2028年予定)まで奈良国立博物館の仏像館で展示。
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