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第77回 修禅寺の「大日如来」

田中ひろみの今月の仏像2025.12.16

 静岡県伊豆市修善寺にある曹洞宗の寺院「修禅寺」。地名は「修善寺」、寺名は「修禅寺」と表記が異なる。修善寺温泉街の中心に位置する。修禅寺は、平安時代初期の大同2年(807年)、弘法大師空海の開基と伝えられている。また、鎌倉幕府初代将軍・源頼朝の弟である源範頼、さらに二代将軍・源頼家が幽閉され、最終的にこの地で非業の死を遂げた寺としても知られる。本尊である大日如来像は、鎌倉幕府二代将軍・源頼家の七回忌にあたり、母である北条政子が修禅寺に寄進したものと伝えられている。修理の際、像内の首下から墨書銘「承元四年(1210年)八月廿八日/大佛師實慶(実慶)作」が発見されたほか、袋に納められた女性のものとみられる頭髪二束とかつら一束も確認された。これらが北条政子の毛髪であるかどうかは確証が得られないまま、像の胎内に戻された。この大日如来像は、国の重要文化財に指定されている。ヒノキ材による寄木造で、玉眼を用い、像高は100.5cm。智慧を象徴する「智拳印」を結ぶ「金剛界大日如来像」である。底板をくり残した上底式の構造を持ち、ややつり上がった目、ふっくらとした頬、高く結い上げられた髪形が特徴的である。通常は本堂内に安置され、遠くで御簾越しでの拝観しかできないが、毎年11月には宝物館へ移され、ガラス越しではあるが間近で拝観することができる。

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