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第78回 金剛院の「深沙大将」

田中ひろみの今月の仏像2026.02.17

 京都・舞鶴市にある金剛院は、もみじの名所として知られ、「丹後のもみじ寺」とも称される古刹である。創建は平安時代初期と伝えられ、平城天皇の第三皇子であり、空海の弟子でもあった高岳親王の開基とされる。宝物館には、鎌倉時代の名仏師・快慶による深沙大将像と執金剛神像が展示されている。高野山の金剛峰寺に伝わる同じく快慶作の像と比べると、金剛院の像はどっしりとした力強い体躯をもち、より重厚で迫力ある表現が特徴である。深沙大将は、中国の古典小説『西遊記』で知られる玄奘三蔵が天竺へ向かう旅の途中、砂漠で倒れかけた際に現れて救い導いた護法神とされる。その姿は物語に登場する沙悟浄のモデルとも、多聞天(毘沙門天)の化身ともいわれている。金剛院の深沙大将像は、強烈な個性を放つ異形の像である。今にも裂けそうな大きな口、見開かれた目、そして頭部には、まるでカタツムリがいくつも乗っているかのような独特の髪型が表される。さらに足元には、膝の部分に象の顔が刻まれ、あたかも“象の半ズボン”を身につけているかのような意匠が見られる。隆々とした胸には二つの穴が穿たれており、かつてはドクロの首飾りが掛けられていたと考えられる。左手の蛇や右手の小指は失われているが、像の各所には白い下地が残り、その上に緑や青の彩色が施されていた痕跡が確認できる。当初の彩色が完全に残っていたならば、その迫力と異形の魅力は、さらに際立っていたに違いない。

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